遠野遥『改良』
先に芥川賞受賞作の破局を読んであまりにも理解が出来なかったので、逆に気になって読んでみた。で、結果やっぱりよくわからん…
そもそも破局もそうだが、文章が無味乾燥というかあっさりしている。というかあっさりしすぎている。『破局』を読んだ時は、審査員の書評などから何かの効果を狙ってのことなのかと思ったが、今作でも同様だった。
これがこの人の文体なんだろうけども、どうもピンとこない。一人称で語られているにもかかわらず全てのシーンが他人的でどうも感情移入できない。主人公の美しさへの拘りの拠り所やその葛藤が特に描かれるわけでもなく、性自認の問題を取り上げているわけでもない。
あえていうなら自己承認欲求についてがテーマなのかもしれない。音楽で自己表現を行っているつくねは見た目には美しくなくとも生き生きしており、そのポイントがないカオリは精神的に不安定、主人公はただ漫然と美しくなりたいと思いそれが自己承認欲求へと繋がっていくのかとも。
冒頭のテーマはラストシーンでの行動に繋がるのだろうけど、そうするとつくねの小学校時代の思い出話は何なのかタイトルの『改良』も何を示すのか?化粧をすること?知り合いに女装を見せること?暴漢に対する反抗か?しかしどれも改良と言うほどでもない。
やはり私にはよくわからない作品でした。
読了日:2021年1月31月 評価:★★☆☆☆
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