村田沙耶香『生命式』
最初の「生命式」から狂ってる…というか正直気持ち悪い。正常は発狂の一種、何が社会的に正しいのか?と自分にしっくりくるのか?は別の話で自分自身の価値観もいつかの社会的価値観の影響下にあるとすると本当に正しいものってあるのだろうか?そんなあやふやな気持ちにさせられる作品。
続く「素敵な素材」もまた狂ってる。村田沙耶香らしくはあるがこの路線がエスカレートするとこのままファンでいられるか少々不安になる。生命式にも似たテーマにも思えるが、何か物質としてのヒトと生物としてのヒトの違いのあやふやさか?この話を読んで嫌悪感を全く感じない人は少ないと思うがその嫌悪感はどこから来るんだろう。
途中、短い話を挟みながら最後の3編がまた良い。特に最後の「孵化」は人間関係における心理を極端に強調して多重人格者の話であるようでいて日常に普通にあるような気もするこれも村田沙耶香さんらしい作品。
全般的に生きていく中で感じるちょっとした違和感をデフォルメして価値観を不安にさせられるような作品が多くファンなら間違いなく楽しめますし、村田沙耶香を読んだことがない人でも「らしさ」に溢れた作品なので良いと思います。(とはいえ初読なら「コンビニ人間」か「しろいろの街の〜」をお勧めします)
※自身のブクログから転載しています。
読了日:2019年11月4月 評価:★★★★☆
※テーマ画像は Gerd Altmann さんによる Pixabay からの画像をトリミングして使用しています。