高山羽根子『首里の馬』
連続と断絶、様々な断絶を含みつつも世の中は連続的に存在する。いや、断絶は連続の中に存在するからこそ断絶なのであって単独で存在した場合、それは一つの事実であって断絶にはなり得ないのか。
断絶にも様々な形がある。政治的な事や重過ぎる愛、人質。戦争や台風による強制的な断絶、自ら望んだ断絶、さらには理解できないものへの拒絶。
この物語で語られるのは、様々な断絶とそれを乗り越える力。そもそも完全な断絶なんてありえないという気付きから決意を持って自分で未来に向かって歩き出すヒコーキに乗った未名子の姿が清々しい。
舞台の沖縄はまさに断絶と連続の歴史を象徴する存在。テーマから舞台を選んだというよりも、沖縄からテーマを切り出したのだろうと思われるくらいに物語の内容に寄り添い、程よい演出となっている。
全体的に静かで派手さはないが、純文学らしい深みを感じるいい作品でした。
※自身のブクログから転載しています。
読了日:2020年8月1月 評価:★★★★☆
※テーマ画像は Gerd Altmann さんによる Pixabay からの画像をトリミングして使用しています。